令和4年度第3回定例会を終えて~確認された4つの重要なテーマ


 令和4年第3回定例会が9月28日に閉会しました。

 今回も「一般質問」、「各委員会」、「決算委員会」を通じて、武蔵野市政における様々な論点が第3回定例会にて議論されました。

 この第3回会定例会におけるトピックの1つは、私が所属する「自由民主・市民クラブ」が決算委員会での議論を通じて「令和3年度武蔵野市決算」を否認したことです。

 決算委員会では、令和3年度に武蔵野市で行われた一般会計と特別会計の事業について、審査されました。

 自由民主・市民クラブが「令和3年度武蔵野市決算」を否認した理由としては、

分断と混乱を招いた「住民投票条例案」説明会の翌日に売却された「吉祥寺駅北口駐輪場問題」など、市民不参加、周知不足の状態で事業が前に進められた結果、深刻な問題となったこと

アストラゼネカ社のワクチンについて12520回分の大量破棄があったこと

川上村にある自然の村の設備整備が十分でなかったこと

などが挙げられます。

 なお、「令和3年度武蔵野市決算」は、最終的には、「自由民主・市民クラブ」のほかに2名の議員が否認しましたが、賛成多数で可決されてしまいました。

 以下では、今回の定例会において武蔵野市議会議員として特に重要だと感じた3つのテーマについて、ご報告いたします。

 


1.物価上昇の顕在化~さらなる物価上昇を想定し、「歳出の在り方」の抜本的な見直しを!

 この定例会においては、令和4年度補正予算が議案としても上程されましたが、燃料費高騰、資材費高騰、食材費高騰などによる物価上昇の顕在化が明らかになり、予算の増額が行われたことが今回の定例会の重要なテーマの1つになったと考えらえれます。

 ご承知の通り、ウクライナに対するロシアの侵攻や円安に起因して、生活に身近な食品価格やエネルギー価格の物価上昇が確認されています。皆様の生活にもすでに物価上昇の影響が出ていると思われます。

 また、鋼材価格の高騰や円安によって建設資材は大きく上昇。建設物価調査会の調査によると、2011年を100とした建設資材物価指数(建設総合)は、2021年当初は110程度の水準でしたが、2022年8月には135近辺まで上昇しています(図表1)。

■図表1:建設費指数(出所:建設物価調査会)

 武蔵野市では、令和4年3月に公表された「第2期公共施設等総合管理計画」によると、この先30年間で2,966億円の事業経費を予定しています(図表2)。これは、直近の資材高騰が織り込まれていない状態で策定された計画ですが、このままでは建設費用の増加によって武蔵野市の財政的な負担が大きく増えるのは必至です。

■図表2:公共施設等の再整備費用の中長期的に見通し(30年間)(出所:武蔵野市)

 また、ここで注目すべき点は、一人当たりの床面積でみると、武蔵野市は近隣自治体の1.4倍の公共施設等を有していることです。

 もともと公共施設等の再整備費用による財政的な負担が多い武蔵野市は、物価上昇による影響を含めて、今後の公共施設関連を中心とした「歳出の在り方」について「危機感」を持ち、抜本的に見直す必要があると考えています(図表3)。

■図表3:類似自治体の市民一人当たり床面積の状況(出所:武蔵野市資料より作成)

なお、関連するブログは以下の通りとなっています。

建設費2割高騰による武蔵野市財政の影響~保健センター増築関連計画を含めた公共施設等の建設計画を見直す必要はないのか⁉


2.将来人口推計速報版~右肩上がりに人口が増加するのか?抜本的な見直しを!

 令和4年9月7日の総務委員会において、武蔵野市の将来人口推計(以下「人口推計」)の速報版が公表されました。その速報版では、武蔵野市の人口が現在の14.8万人から2052年に16.1万人に増加するという内容になっていました。
 私は、この「右肩上がりの人口推計」は、今回の定例会におけるとても重要なテーマの一つだと考えています。

■図表4:武蔵野市公表の将来人口推計(出所:武蔵野市)

 この推計値は、日本や東京都の人口が減少する中で、唯一、武蔵野市だけ人口が増加するというものです。少子高齢化が予想される中で、武蔵野市だけが人口増加する?という強い違和感を持つ推計結果です(図表5)。

■図表5:日本、東京都、武蔵野市の人口推計(2020年を100とした場合)

 武蔵野市は、公共施設等の再整備費用に多額の税金が必要となるだけでなく、外郭団体を含めた外部機関へ多額の税金を投入するなど高コスト化が進んでいます。

 問題は、実際の人口がこの将来人口推計を下回る場合に税収が想定より少なくなることです。一方、人件費や公共施設の再整備のようなコストは急には削減できません。その結果として、未来の武蔵野市民に多額の負担をお願いすることになってしまう危険性が懸念されます。

 私は、人口動向や建設費用高騰などの影響を踏まえたうえで未来を見据えると現在の武蔵野市に40億円の税金を投入して、保健センターを増築する財政的な余裕はないと考えています。
 執行部の方には、右肩上がりの将来人口推計ではなく、これまで以上の「危機感」を持って武蔵野市の未来を見据えた将来人口推計を策定していただくことをお願いしたいと思います

 この件の詳細は下記のブログに書いています。そちらもぜひご覧ください。

武蔵野市の将来人口推計における10の疑問点:その①~人口推計の重要性とその特徴

武蔵野市の将来人口推計における10の疑問点:その②~武蔵野市の人口推計の推計方法と問題点


3.吉祥寺駅北口駐輪場売却問題~企業Xの経営権を中国・香港ファンドが取得!?隔地駐輪場についての条例違反の可能性も新たに発覚!

 吉祥寺駅北口駐輪場売却問題については、土屋正忠元武蔵野市長が松下玲子武蔵野市長に対して9億9,870万円の損害賠償請求を求める住民訴訟を起こしていますが、この定例会が開催されている間に、以下の2つのことが明らかになりました。

①武蔵野市が駐輪場を売却した先である企業Xの経営権を、中国・香港の投資ファンドがTOB(株式公開買付)にて取得する動きがあることを企業X及び投資ファンドが公表し、日経新聞などでも報道。

②企業Xが購入した駐輪場跡地に建設予定の施設に必要な駐輪場の付置義務について、350m離れた場所に「隔地駐輪場」を設置する方針であることが明らかになりました。そして、市長が場所と仕様については決裁したことが確認されています。

 しかしながら、後述するとおり、350m離れたところに「隔地駐輪場」を設置することは、条例にある「付置義務」(*)に違反、つまり、『条例違反』だと私は考えています。

(*)「付置義務」とは、一定規模以上の施設を新築又は増築する場合には、「自転車駐車場の設置」を条例で義務付けていることです。

 ①については、そもそも市が企業Xと結んだ土地売買契約書には、「公共貢献」などが売払い要件にて記されています。要は、市有地を売却するけれど、企業Xは施設の建設と運営において公共貢献に資する対応をする」ということが約束されていたのです。

 しかし、経営権移転によってこの売払い要件が遵守されない可能性が高まったことが議会にて指摘されました。また、この企業Xは「(駐輪場跡地に)建築した施設が転売されることは否定できない」という主旨の発言をしていたことが判明しました。

 武蔵野市は、「市の利益の増進」に当たるとして、武蔵野市の貴重な市有地を入札することなく「随意契約にて代替地として売却」したのですが、この土地取引によって、市の主張する「市の利益の増進」があるのか強い疑問を持たざるを得ません

 ②については、「武蔵野市の武蔵野市自転車等の適正利用及び放置防止に関する条例及び施行規則」にて、新たに建設する施設等について駐輪場の「付置義務」が定められています

 この条例設置の目的は、条例第1条にあるように「本市における自転車等の利用環境の整備、安全利用の促進及び放置防止に関する必要な事を定めることにより、・・・(中略)・・・安全で快適な市民生活の実現に寄与することを目的とする」というものです。

 そして、そのためには隔地駐輪場を設置する場合は、施行規則第2条第2項で当該施設の敷地に到達するために歩行する距離が『100m以内』であることと定めています

 しかし、今回明らかになった企業Xによる施設から『350m』離れたところに隔地駐輪場を設置することは明らかに『条例違反』だと考えられます。

 もし、『350m』離れたところに隔地駐輪場を設置するのならば、まず条例を改正する必要があり、現在の条例では認められるものではありません。法的根拠は確認されていないのです。

 また、武蔵野市が『350m』離れたところに隔地駐輪場を設置することを認める行為は、条例を曲解させて企業Xのために意図的に都合の良い解釈をしているとしか考えられません。これは、『裁量権の逸脱、或いは濫用』に当たると考えられます。

 武蔵野市自らが法秩序を乱して『条例違反』をするのと同様の意味を持つとも考えられます。

 本当に大きな問題です。

《参考:条例及び施行規則(抜粋)》

条例 第1条 この条例は、本市における自転車等の利用環境の整備、安全利用の促進及び放置防止に関する必要な事を定めることにより、円滑な交通と防災活動を確保し、あわせてまちの景観等の向上を図り、もって安全で快適な市民生活の実現に寄与することを目的とする。

施行規則 第2条 第2項 条例第8条第1項に規定する「その周辺」とは、当該施設の敷地に到達するために歩行する距離がおおむね100メートル以内である場所をいう。

(注)条例第8条第1項では、「…(中略)…当該施設若しくは敷地内、又はその周辺に自転車等駐車場を設置し、自転車等の整理をしなければならない。」と定められています。

 新たに発覚した2つの問題。これらは、武蔵野市が貴重な市有地であった駐輪場を企業Xに売却したことが間違った判断であることを再認識させられるものとなりました。


4.右肩上がりに増加し続ける物件費~委託費は高止まり。物件費削減は必至!一時的な要因かどうか注視が必要!

 図表6は、2010年度以降の物件費の推移を示していますが、この物件費は右肩上がりに増加しています。具体的には、2010年度の物件費は126.5億円でしたが、2021年度(令和3年度)の物件費は171.5億円と45億円も増加しました。

 その要因は、外郭団体などの外部機関への委託費が増加しているためです。武蔵野市の外郭団体数は14あり、多額の税金が投入され続けてきました。そして、外郭団体における職員の昇給などによる人件費増加分を税金で負担してきたことがこの委託費増加の主因となっています。

■図表6:物件費の推移(内訳として委託費(除くコロナ関連)、委託費(コロナ関連)、委託費以外)

 2021年度(令和3年度)についてみてみると、その特徴は、
 ①物件費自体は前年度対比で11億円増加
 ②ただし、コロナ関連の委託費が16億円計上されていてその影響が大きい
 ③物件費増加の主因となった委託費(除くコロナ関連)は若干の減少(青色の棒グラフ部分)
 ④委託費以外の物件費は例年40億円程度だが、令和3年度は3億円程度少ない37.7億円となった(緑色の棒グラフ部分)
 ⑤物件費(コロナ関連を除く)のうち、委託費(コロナ関連を除く)が占める割合は76%に上昇
が挙げられます。

 多額の税金が投入されていて、かつ、右肩上がりに増加してきた委託費ですが、上記③のとおり2021年度(令和3年度)のコロナ関連を除いた委託費は若干の減少となりました。

 この先注目されるのは、
・委託費(除くコロナ関連)で見られた変化に対して、この先は再び増加に転じるのか、或いは、減少傾向に転じるのかということ
・委託費以外の物件費は例年40億円程度のところが37億円台となったが、これが一時的なものなのか、このまま減少したまま推移するのかどうかということ
と考えています。

 いずれにせよ、図表7で確認できるように、他の自治体よりも圧倒的に多額の税金を投入している武蔵野市の『委託費』を含めた物件費の動向には注視が必要です。

■図表7:物件費の推移(武蔵野市、三鷹市、小金井市、西東京市)

 上記1でお知らせしたように、武蔵野市において、物価上昇による財政的な負担が増えていくのは誰の目にも明らかなこととなっています。

 執行部の方々には、当然、これ以上物件費が増加しないような市政運営をお願いしたいと思います。





 

 以上、第3回定例会において議論されたテーマのうち、特に重要であると感じた4点についてご報告しました。

これからも未来の武蔵野市を見据えた市政運営が行われるよう、議会にて活動すると同時に、市民の皆様へ武蔵野市政の問題点をお知らせできるように情報発信してまいります。

 なお、一部の方から、市政以外の柔らかいテーマもブログで書いてみたら、というお声もいただきました。タイミングを見て、どちらかというとプライベートに近い内容のブログも今後お知らせしたいと思います。よろしくお願いいたします。

武蔵野市議会議員 小林まさよし
武蔵野市議会議員 小林まさよし