武蔵野市の将来人口推計における10の疑問点:その①~人口推計の重要性とその特徴


 令和4年9月7日の総務委員会において、武蔵野市の将来人口推計(以下「人口推計」)の速報版が公表されました。

 その人口推計は、現在14.8万人の《武蔵野市の人口》が右肩上がりに増加して、2052年には16.1万人(現在より+1.3万人増)になると推計しています。

 一方、《日本全体の人口》を見てみると、現在の1億2550万2千人が2053年には1億人を割る試算されています。

 少子高齢化・人口減少が進む中で、本当に武蔵野市の人口は増加するのでしょうか。皆様はどのように予想されますか

 私は武蔵野市の人口が、市の「人口推計」のように増加するとは予想できません。市民の多くの方から、『ありえない!楽観的過ぎる』『見通しより少なくなったらどうなるのか?だれが責任を取るのか?』などのご意見をいただいています。

 この「人口推計」は抜本的に見直す必要があると考えています。

■図表1:日本と武蔵野市の将来人口推計(筆者作成)

   
 今回は、『武蔵野市の将来人口推計における10の疑問点』の第一弾として、
・武蔵野市の人口推計の重要性
・国や東京都の推計値と比較した武蔵野市の人口推計の特徴
についてお知らせいたします。
(10の疑問のうち、今回は4つの疑問までとなります。)
 


1.平成30年公表の将来人口推計

 上述した「人口推計」は4年ごとに見直されることになっており、今年度に公表予定の「人口推計」の速報版です。現時点では、2018年に公開された「人口推計」が公式な推計結果ですが、これにおいても、武蔵野市の人口は右肩上がりに増加して、2048年に16.2万人になるという見通しとなっています。

■図表2:平成30年公表の武蔵野市の人口推計(出所:武蔵野市)

~疑問点その1:武蔵野市の人口は右肩上がりに増加し続けるのでしょうか?~


2.「将来人口推計」はなぜ重要か?

 この「人口推計」は、武蔵野市の長期計画などを策定するに当たり、基礎データとしてとても重要なものです。

 例えば、 図表3は、「第6期長期計画」において、平成30年公表の「人口推計」に基づいて算出された長期財政シミュレーションです。上述したように「人口推計」は右肩上がりに増加する予想に基づいて税収などが試算され、2049年度までの財政状況を予想しています。

 その長期財政シミュレーションの特徴は、右肩上がりに増加する人口に基づく税収見込みをベースにしても2047年度に財源不足になることです。
(「人口推計」がこの見通しを下回って少ない人口数となった場合には、2047年以前に財源不足になると予想されます。)

■図表3:長期財政シミュレーション(出所:武蔵野市)

 また、小・中学校、保育園などのような公共施設等の建設計画においても、この「人口推計」のデータが用いられます。

 平成30年公表の「人口推計」によって策定された「第2期公共施設等総合管理計画」では、市民一人当たりの床面積を2.08㎡に抑えるとしながらも、武蔵野市における公共施設等の再整備費用に30年間で2,966億円もの多額の税金を投入する必要があるとしています。

■図表4:公共施設等の維持管理・更新等の係る中長期な経費の見込みと充当可能な財源見込みの比較(出所:武蔵野市)

 財政シミュレーションにしても、公共施設等の建設計画にしても将来の実際の人口がこの「人口推計」より少なくなったら、市民の皆様の負担が増えることは間違いありません。

 以上のように、武蔵野市の人口推計は、長期の市政運営に大きな影響をもたらすとても重要なデータであり、この人口推計の通りにならなければ、財政的にも大きな影響を及ぼすことになります。

~疑問点その2:実際の人口が市の人口推計よりも減少した場合、未来の財政的な負担は大きくなります。その責任は一体誰が取るのでしょうか?~

疑問点その3:建設費用は現在、2021年当初よりも2割上昇。30年間で2966億円を必要とする再整備費用が増加すると予想されます。人口増加という楽観的な見通しで武蔵野市の未来は大丈夫でしょうか?~


3. 国ならびに東京都の将来人口推計はどのような推計値か?

図表5は、2020年の人口を100とした場合の
① 〈武蔵野市〉が推計した《武蔵野市》の人口推計(令和4年9月に報告された速報版)
② 〈東京都〉が推計した《武蔵野市》の人口推計(*)
③ 〈東京都〉が推計した《東京都》の人口推計(*)
④ 〈国立社会保障・人口問題研究所〉が推計した2050年までの《日本全体》の人口推計
となっています。
(*) ②と③については2045年、2050年の推計値がないため、2035~2040年の変化率を2045年と2050年に織り込んだものを参考データとして試算しました。

■図表5:日本、東京都、武蔵野市の人口推計(2020年を100とした場合)

このデータから分かることは以下の(ア)~(エ)の4点です。

(ア)武蔵野市推計の武蔵野市の人口推計(①)は、他の推計と異なり、唯一2050年において人口増加。2020年を100とした場合に2050年において109.3まで増加する。

(イ)日本の人口推計(④)は、右肩下がりに減少。2020年対比で2050年には20%近く減少する。

(ウ)東京都の人口推計(③)は、2035年に2020年の水準より減少。2050年には、2020年より人口は7.5%減少する。

(エ)東京都推計の武蔵野市の人口推計(②)は、2040年に2020年の水準より人口は減少。2020年を100とした時に2050年は95.4となり、現在より8千人少ない14.0万人となる。

 このように、武蔵野市の人口推計(①)だけが人口が増加するとしています。

 しかしながら、将来は減少するという日本や東京都の人口推計を見る限り、武蔵野市の将来人口推計について納得感があるのは、2050年に武蔵野市の人口が上記の(エ)にある通り14.0万人程度になるというものです。

 もし、2050年の人口が武蔵野市の将来人口推計の通り(16.0万人)ならずに14.0万人となったら、税収がは減る一方で、過剰に整備する公共施設等の費用が大きくなることで、未来において市民の皆様に財政的な負担を強いることになると考えられます。

~疑問点その4:武蔵野市だけが人口増加するということがあるのでしょうか?推計通りにならなければ市民の皆様の負担が増えることになってしまいます~


 『武蔵野市の将来人口推計における10の疑問点』に関する第一弾として、「武蔵野市の人口推計の重要性」や「国や東京都の推計値と比較した武蔵野市の人口推計の特徴」をご覧いただきありがとうございました。

 武蔵野市の長期的な市政運営はこの右肩上がりの人口推計に基づいて行われます。

 皆様は、このような推計値でよいとお考えになりますか?武蔵野市の未来が大丈夫かという不安の気持ちを持ちませんか?

 私は、不安の気持ちでいっぱいです。現市政には、未来に対する『強い責任』と『危機感』が必要です。

 第二弾では、この人口推計の算出方法と問題点などについてお知らせしたいと思います。近日中にお知らせしますので、そちらもご覧ください。

武蔵野市議会議員 小林まさよし