武蔵野市において一定規模の施設を建設する際には、その施設を利用者のために駐輪場を設置しなければならないことが条例(*)で定められています。
当然のことながら、吉祥寺北口にあった駐輪場の売却先である企業Xも新たに建設するビルには、駐輪場を設置しなければなりません。
ご存じのとおり、ユニクロは地下に、ヨドバシカメラは敷地内に駐輪場を設置しています。
ここで東京都豊島区の駐輪場の附置義務制度を見てみましょう。豊島区では次のように規定しています。
- 自転車駐車場の設置場所は、当該建物内に設置
- やむを得ず敷地外に設置する場合は、敷地から50m以内の場所で、恒久的な自転車駐輪場とし、借地などの仮設駐輪場は不可
原則は建物内若しくは敷地内に駐輪場を設置することが求められており、やむを得ない場合にのみ「隔地駐輪(離れた場所に設置する駐輪場)」を認めるという豊島区の考え方が一般的です。
武蔵野市でも、多くの事業者の方には建物内か敷地内に設置していただいています。仮に、「隔地駐輪」にする場合は、条例・施行規則において『おおむね100m以内』と定めています。
ところが、企業Xは『建築予定の建物から350mも離れたところ』に駐輪場を設置しようとしており、市長がそれを認める決裁しています。私は、この武蔵野市の対応は「条例・施行規則違反」だと考えます。
図表1:企業Xの隔地駐輪場の設置場所
さらに、「350m」を認めた法的根拠に疑問が残ります。
この点については情報開示請求した資料によると、
・東京都駐車場条例の第18条第1項(以下、「駐車場条例」)
の解説(考え方)を準用していることが確認されました。
この条項では、「おおむね300m以内の場所」と定められています。武蔵野市は、「駐車場条例」が「300m以内」としているから、隔地駐輪場の設置も「300m」で問題ないというのです。
(注)この隔地駐輪の対応方針についての市長決裁は令和4年5月31日に行われていますが、市民の代表で構成される議会への報告は一切ありません。
しかし問題は、この「駐車場条例」が自動車の『駐車場』を対象にした条例であることです。
自転車の『駐輪場』を対象にしたものではありません。武蔵野市の担当者もそのことを認識していました。
今回の企業Xの隔地駐輪場を350m離れたところに設置することについて、自動車を対象とした「駐車場条例」の考え方を準用するというのは、そもそもの法の主旨から逸脱していると言わざるを得ません。
非常に残念な武蔵野市の対応です。なぜ法の解釈を捻じ曲げてまで、企業Xを特別扱いするのでしょうか?本当に不自然、不可解です。
いずれにせよ、今回の隔地駐輪に対する武蔵野市の対応は、憲法をはじめとする様々な法令等に違反する可能性があると考えられます。
このような恣意的かつ不合理な行政権の行使を認めるわけにはいきません。
これからもこの市長決裁を破棄することを強く要望するとともに、今後もこの問題についても厳しく追及してまいりたいと考えています。