駐輪場問題③~「駐輪場を『代替地として随意契約』で売却」したことの違法性について


 これまでのブログでは、駐輪場問題の『取引の概要と主な経緯』と『二つの土地取引の比較と評価の問題点』についてご報告しました。

 第3回目は、駐輪場を『代替地として随意契約』で売却」したことの違法性についてお伝えしたいと思います。


 
 本来、市の財産(普通財産)は「原則、競争入札で売却」されなくてはなりません。

 しかし、今回の土地取引では、武蔵野市は、「駐輪場(B土地)の隣地を所有する企業Xに、入札でなく優先的に駐輪場を随意契約」で売却しました。この点について違法性があると考えています。

(注)入札とは、複数の業者が競争して入札するとであり、公平性や透明性が確保でき、経済的なメリットがあるとされます。一方、随意契約とは、入札がそぐわない場合などに、入札を経ずに特定の相手と契約することを言います。

 今回の住民訴訟の大きな争点の1つは、

・この駐輪場(B土地)を『代替地として随意契約』で売却したことが

『裁量権を逸脱(権限の範囲を超えること)』、もしくは、『裁量権(権限)の濫用(権限の妥当性に欠けるいこと)』に当たると司法が「判断するか否か」

だと考えています。

 私は、この土地取引は、「公益性」という観点で「法の主旨」に沿わないものであり、『裁量権の逸脱』、もしくは、『裁量権の濫用』にあたり違法性があると考えています。以下ご覧ください。


1.松下市長の説明~「武蔵野市普通財産売払い事務取扱要綱」を適用した売却は「適法」である

 松下市長は、令和4年3月1日の第1回定例会において、
 「駐輪場のほうですけれども、条例に基づいて、また、要綱に基づいて随意契約を行っております武蔵野市の事務事業の用に供するため・・・(中略)・・・土地を提供した者に対して普通財産を代替地として売り払う場合という、この要綱の第4条第3号を適用して随意契約で契約を行っております。」
と述べています。(武蔵野市会議録検索より)
 
 松下市長は、武蔵野市普通財産売払い事務取扱要綱(以下、要綱)」に基づき、駐輪場を代替地として随意契約』にて売却しているから「適法」だと主張しています。


2.「武蔵野市普通財産売払い事務取扱要綱」における『代替地として随意契約』で売却することについて

 武蔵野市は、市の財産(普通財産)を売却する際の規定を「要綱」で定めています。

 そして、今回の土地取引について、『代替地』として売却することの「適法性」について、以下の通り説明しています。

  • ① 第3条にある通り、普通財産の売却は「原則入札」だが
  • ② 第4条第1項にあるとおり、「・・・(中略)・・・市の利益の増進につながると市長が認める場合・・・(中略)・・・」に該当するので
  • ③ 第4条第1項第3号の「事務事業の用に供するため・・・(中略)・・・土地を提供した者に対して普通財産を代替地として売払う場合」にある通り、「駐輪場を『代替地として随意契約』で売却」した

 

 しかし、この要綱に従って、A土地に駐輪場を建設するために、「駐輪場を『代替地として随意契約』で売却」することは「適法」なのでしょうか?

 また、「事務事業の用に供する」というのはどういうことなのでしょうか?


3.国や東京都はどう規定しているか?~公有地を代替地として売却する際の法律・通達、都の規則

 国や東京都が財産(普通財産)を代替地で売却する際の規定について調べてみると、道路、河川、公園に関連する事業である必要があると規定しています。

 財務省理財局からの国有地の売却についての通達(「国有地を公共事業の代替地として売り払う場合の取り扱いについて」)には、

・公共事業の代替用地としての売払い基準の1つに、
「土地収用法第3条各号の一に掲げる施設に関する事業に係るものであること」

と定めています。

 「土地収用法」の第3条の各号を見てみると、主なものとして、
・道路法、河川法、土地改良法、鉄道事業法、道路運送法、航空法、電気通信事業法、電気事業法、ガス事業法、消防法、水道法、学校教育法、社会福祉法、自然公園法、都市計画法
が挙げられています。

 令和4年6月9日に開催された第2回定例会の一般質問で、私が「今回の土地取引が土地収用法の適用対象であるか」と質問すると、松下市長は、「これは土地収用法の対象事業ではございません。」(武蔵野市会議録検索より)とはっきり答弁しています。

 東京都は「公共事業の施行に伴う代替地の売払に関する規則」の第2条において、

・公共事業とは、知事又は都が施行又は施行を委託している公共事業のうち、道路、河川、公園、住宅及び清掃に関する事業並びに市街地再開発事業

と規定しています。

 令和4年9月2日に開催された第3回定例会の一般質問で、「今回の自転車駐車場建設事業(A土地を購入して駐輪場を建設すること)は、東京都の公共事業の定義に該当するのか」と質問したところ、松下市長は「該当しない」と答弁しました。


4.松下市長は「裁量権」を『逸脱』もしくは『濫用』して事業を進めていないか

 松下市長は、今回の2つ土地取引について、「まちづくりに資する形で今回の取引をしている」と答弁していますが、本当に必要ならば、土地収用法の対象事業となる「都市計画法」に基づいて都市計画決定をして、議会、市民に周知した上で、この事業を進めるべきだったと考えらえます。

 都市計画決定できなかったのかしなかったのかはわかりませんが、そうすれば代替地として髄契約で売却することに違法性を問われることはなかったのではないでしょうか。

 

 土地収用法の対象となる事業となるような「公益性の高い法律」に基づくことなく、市の貴重な財産を隣地所有者である企業Xに売却するということは、やはり『裁量権の逸脱』もしくは『裁量権の濫用』であり、「違法」であると言わざるを得ません。

 これが許されてしまうと、「事務事業の用に供するため」として、三鷹駅北口や武蔵境駅周辺の駐輪場も、市長の「まちづくりに資する」という判断一つで民間企業に対しても『代替地として随意契約で売却』されてしまいます

 このような『裁量権の逸脱』や『裁量権の濫用』が生じることのないように、「代替地として随意契約で売却することのできる事業」を国や東京都のように定義する必要があると私は考えます。

 市民の皆さまはどう思われますか?


5.市民不参加、議会軽視の市政運営

 最近になって、松下市長をはじめとする執行部は、これらの土地取引について、市民周知をしてきたという発言を繰り返しています。

 しかし、松下市長は、令和3年11月24日に開催された第4回定例会にて、「このたびの吉祥寺東部地区における市有地の取引につきましては、住民参加による検討が必要だったのではとの御意見もいただいておりますが、これまでも、土地の取引については、相手があることですので、契約締結前に議会や市民にお諮りをしながら検討するといったことは行っておりません」(武蔵野市会議録検索より)と明確に答弁しています。

 令和3年10月27日の市民説明会の翌日にB土地(駐輪場)は売却されたのですが、この答弁を含めて、松下市長をはじめとする執行部は、市民や議会に対して、今回の取引について十分に説明しようとする意思があったとは到底考えられません

 このような市民不参加、議会軽視の市政運営を変えなくてはならないと思います。


 今回は、「駐輪場を『代替地として随意契約』で売却」したことの違法性についてお知らしました。

 最終的には、司法の判断によるところになりますが、私は、土地収用法の対象となるような「公益性が極めて高い法律」の対象事業でないと、公有地を代替地として随意契約で売却してはならないというのが「法の主旨」であり、駐輪場を売却して新たに駐輪場を建設するという「事務事業」のために『代替地として随意契約』で市有地を売却するという行政行為は、『裁量権の逸脱』、もしくは、『裁量権の濫用』であり「違法」と考えています。

 皆様は、この土地取引が、「公益性が極めて高い事業」と判断されますか?