武蔵野市は、市の最も重要な計画と位置付ける『長期計画』を策定しています。現在の第六期長期計画は、2020~2049年までのものですが、武蔵野市の政策は、原則としてこの長期計画に基づいて実行されています。
そして、この長期計画の行政運営を実行するにあたり、必要となるデータの1つが『将来人口推計』なのですが、この武蔵野市は、誤った将来人口推計結果を用いて、行政運営を実行している、という大きな問題があります。
武蔵野市の将来人口推計は、趨勢期間といわれる2013年~2017年の傾向をもとに算出されます。
その将来人口推計の算出結果について、簡単にいうと、この「趨勢期間である2013~2017年において、人口が増加傾向にあるので、2048年の推計結果である16.2万人まで、人口は減少することはなく、増加し続ける」ということなります。
以下の表のとおり、全国的に少子高齢化と人口減少が進むとされる中で、2040年に、
・日本は大きく減少、東京都も僅かながらも減少
・しかしながら、武蔵野市だけが、市内の人口は増加し続ける
と推計されています。
私は、この『人口が増加し続ける』将来人口推計は誤っており、この将来人口推計を用いた行政運営は正しいものにならないと考えています。
また、この将来人口推計について、私は、楽観的過ぎると考えています。将来の人口が、この人口推計を下回ることになったら、
- そもそも人口が多いと予測する分だけ、楽観的な(多めの)税収見通しとなるので、税収が予想を下回ることになり、現状の財政シミュレーションよりも早く財政問題(財政悪化)が表面化する。
- その結果、当初計画していた行財政サービスを提供できなくなる。(行政サービスの質が低下する)
- 財政問題が表面化した場合、武蔵野市のブランドイメージを損なうと同時に、市内の資産価値は下落する。
という可能性が生じます。
いずれにせよ、将来、人口が想定よりも減少した場合、市民の皆様の負担は大きく増えることになります。そうなったら、その責任はだれがとるのでしょうか。
現市長でしょうか?現副市長でしょうか?
私は、早急に、新たな人口推計を試算すると同時に、現状認識できるコロナ禍の影響を反映させた長期計画や長期財政シミュレーションを再策定するべきだと考えています。
なお、現時点においては、残念ですが、議会にて、財政シミュレーションの見直しなどを指摘されていますが、武蔵野市は令和6年(2024年)まで見直さないとしています。
この間、武蔵野市は、コロナ禍の影響を無視したまま、また、それ以前に策定された長期計画や誤った人口推計に基づいて、行政運営を行っていくということになります。
この武蔵野市の対応が、市民の皆様のための市政運営といえるのでしょうか?
武蔵野市が目指す「誰もが安心して暮らし続けられる魅力と活力があふれるまち」については、その実現可能性に、強い疑問を持たざるを得ません。
私は、将来に大きな問題が生じうる、失政が行われていると判断しています。
《ご参考:2013~2017年の傾向を用いたい人口推計は正しいのか?~新規住宅着工戸数の実績と予測による検証》
2013~2017年の傾向を用いたい人口推計は正しいのか、という点について検証するために、新規住宅着工戸数の実績と予測を確認してみたいと思います。
まず、趨勢期間である2013年から2017年の傾向としていえるのは、低金利政策や住宅ローン減税などによって、子育て世代の住宅購買意欲が高まったことにより、武蔵野市に移動(引っ越し)して、人口が増加する結果になったということです。
武蔵野市は、この傾向を用いて、2048年まで人口が増加し続けるという人口推計を算出しています。
そこで、人口移動(子育て世代の引っ越し)が2013年から2017年の傾向通りに、今後も生じうるかどうかについて、新設住宅着工戸数の実績と予測から確認してみたいと思います。下の表は、野村総研という研究機関が公表している『新設住宅着工戸数の実績と予測』です。
ご覧いただくと、その特徴として、
- 2022年以降、新設住宅着工戸数は右肩下がりに減少すると予測されている
- 2040年には、2010年代の新設住宅着工戸数の半分近くまで減少すると予測されている
ということが挙げられます。
従って、未来において、住宅着工戸数が減少すると予想する『新設住宅着工戸数の予測』からは 、武蔵野市に引っ越してくる人も減少することになり、
・2013年から2017年の傾向を用いて、将来の人口推計を算出すると、誤った結果を導き出す
と判断されます。
武蔵野市は、この人口推計の算出方法を見直すと同時に、コロナ過の影響を含めた新たな将来人口推計を算出するべきだと考えられます。