参院選では多くの政党が『消費税減税』を公約に掲げていました。個人的に懸念するのは、消費税減税は国益に資するというよりも、国益を損なうリスクの高い政策(劇薬)になるのではないのかという点です。

そのように懸念するのは、昨今、金利上昇が顕著にあることです。30年国債金利は過去最高水準となる3%台となりました。以前は高くても2.5%程度でしたが、これは以前よりも 『将来の経済や財政に対する不安が反映』されたものと考えられます。
債券運用のメインプレイヤーである保険会社に勤務し、また、証券会社では 証券アナリスト として保険会社の分析をしてきた経験からは、金融市場が日本の財政状況に対して強い懸念を持つと同時に警告を発しているように思えて仕方がありません。
(ご参考)保険会社のリスク管理・資産運用等について執筆したレポート

消費税減税 が行われて財政規律を維持できないと市場が判断すると、日本に対する信認が崩れることから金利は大きく上昇(ハイパーインフレ と呼ばれるような悪い金利上昇)し、国民生活や経済に悪影響を及ぼし、国益を損なうことになる可能性が高まると考えられます。
かつてギリシャでは財政問題が顕在化して、長期金利が36.5%まで上昇しました。そこまでの上昇はないとしても、金利上昇がしないと言い切れるのでしょうか?例えば、日本で長期金利が10%まで上昇したらどのようなことになると考えられますか?

ギリシャでは、ギリシャ危機発生により①景気悪化、②失業率の上昇、③公共サービスの削減などがあったとされますが、日本でも財政問題が顕在化すれば、例えば、金利が大幅に上昇することから、
・企業の金利負担等が増加することに伴う景気悪化
・変動金利の住宅ローンを借りている個人も金利負担増加することから手放すことへとつながり不動産市況が下落する
につながる可能性が想定されます。また、
・ギリシャ同様、失業率の上昇や公共サービスが削減される
可能性も想定されます。
ギリシャはユーロ圏であり通貨発行権がある日本とは異なるのは事実でありすが、このまま国の借金が増加し続けていけば、国の信用を失えば金利が大きく上昇する可能性を否定することはできません。令和7年度の国債の発行量は20年前と比較して倍増した1,129兆円となる見通しです。

私が証券アナリストとして海外投資家と意見交換した際のことをお知らせすると、海外投資家は日本の財政状況に懸念を示すと同時に、投資機会としてとらえていたというのが事実です。
実際に、7月29日の日経新聞の記事では、海外のヘッジファンドが、「日本の長期金利について「2.0%程度まで上昇余地がある」との見方を示した。日銀の利上げや財政拡張への思惑などで国内金利は上昇しやすいとみており、中長期債には空売り戦略が有効だ」と語ったとしています。
(参考:日経記事)
https://nikkei.com/article/DGXZQOFL248YBTU5A720C2000000/
この海外投資家が行おうとしている空売り戦略とは、例えば100円の価値のものを先に売って、60円になった際に買い戻すということですが、極端な状況になれば、トリプル安(株安、円安、債券安(金利上昇))に伴う、上述したギリシャ危機で生じたような「日本売り」という状況になりかねないことが懸念されます。
消費税減税は、一時的な効果はあるものの、財政への大きな負担を伴い、長期的には深刻な副作用をもたらしかねないリスクの高い政策だと私は考えます。消費税減税は国の根幹を揺るがしかねません。
国政を預かる国会議員の皆様には、長期金利の上昇だけでなく30年国債金利は過去最高水準にあるというこれまでと異なる状況(変化・兆候)を軽視することなく、危機感を持って、この日本が美しく、強く、次世代に負担を残すことがなく、持続可能となる国政運営をお願いしたいと思います。
特に、自民党政権下において消費税減税を行い、その結果、財政規律が崩れて、日本の信認を失う事態から大幅な金利上昇などが生じたら、そのショック発生後の日本の再生は本当に厳しい道のりになると考えられます。
そのような事態とならないように、自民党の国会議員にはポピュリズムに走ることなく、『将来に負担を残さないための財政規律の維持』について、責任政党としてブレずに現実的な政策を推進していただきたいと思います。
皆様にも、消費税減税が、美しい日本を強くして、守ることにつながるのかどうか、という点についてご考察いただければと思います。
なお、土屋正忠元武蔵野市長、元衆議院議員も同様の懸念をブログにて示しています。

