武蔵野市の現状評価:ネガティブインプレッション!財政計画では18年の間で生み出された高コスト化や行財政改革の遅れが顕在化して市の財政負担が大きく増加!


 現状の武蔵野市について、証券アナリストの経験をもとに、レポート形式で評価しました。この内容については、令和7年2月28日に行われました一般質問の冒頭でお知らせしています。


1. かつてリーディングシティと言われた武蔵野市だが、土屋市政より後の18年間は停滞した と多くの市民が評価、行財政改革への取り組みも大きく後退した

 武蔵野市の令和7年度予算の市民一人当たり市税は31.4万円である。近隣の自治体の20万円台前半程度と比較すると1.5倍に近い水準である。担税力のある市民に支えられて、武蔵野市は国内市町村では圧倒的に豊かな財政力を誇る。


 かつて、土屋市政においては、この豊かな財政を背景に、日本初のコミュニティバスであるムーバス、レモンキャブ、セカンドスクールなど、クリエイティブに市民サービスを提供し、かつてはリーディングシティと言われた。また、土屋市政では4000万円という高額退職金の是正に取り組んだほか、昭和58年に外部の有識者による行財政点検委員会を設置するなど、行財政改革に取り組み続けた。


 しかし、土屋市政より後の18年間は停滞したと評価する市民は多い。本来多額の税金を投入して進められるべきであった吉祥寺駅南口、三鷹駅北口の再整備、都営水道の一元化などの街づくりは先送りされ、一方で
・豊かな財政は、外郭団体などの外部機関への委託費としての物件費
・多くの公共施設の建設や再整備のために多額の税金が投入され
高コスト化が大きく進んだ。

 特に物件費についてみると、令和7年度予算は230億円となり、平成17年度の物件費116億円と比較するとほぼ倍増することになる。高コスト化の証左の一つである。

 なお、平成18年に事務事業・補助金見直し委員会が設置されて以降、外部有識者による行財政改革員会は設置されていない。土屋市政より後の18年間において、年を追うごとに行財政改革への取り組みや意識が後退したことが、現状の市が事務事業数を把握していないという事態や後述する市民不参加の行財政改革の基本方針等を生み出すことになったと考えられる。

2. 高コスト化が加速!物価高騰や建設費高騰を主因に財政負担が大きく増加!18年間に進んだ高コスト化がさらに今後の武蔵野市の財政を圧迫させる

 上述したように、土屋市政より後の18年間、物件費の倍増、投資的経費の増加、行財政改革の後退によって高コスト化が進んだ武蔵野市だが、昨今の物価高騰や建設費高騰が、今後の市の財政をさらに圧迫させる。

 具体的には、第6次長期計画調整計画(以下、「6長調」とします。)の5年間の財政計画の歳出額は年平均で788億円であったが、第6次長期計画第二次調整計画(以下、「6長2次調」とします。)では年平均が875億円になった。5年の年平均で87億円も増加したのは、一時的なものではなく、建設費の高騰などを要因とした構造的な変化によるものと考えられる。物件費、扶助費、投資的経費が20億円前後増加した。

 

 歳入においては、地価上昇や所得増に伴う市税の増加が年平均で39億円もあったが、この歳出をカバーするために、市債の発行残高と基金の取り崩しが増加する。市債の発行増は金利負担をもたらすことになるだろう。また、基金の取り崩しもこれまでよりも前倒しになると推察される。

 武蔵野市は18年間に生み出された高コスト化が今後財政を圧迫して、大きな問題になる可能性に強い危機感を持って対応する必要があろう。

3. 市民参加をアクションプランの筆頭に置く第七次行財政改革における市民不参加という矛盾

 18年間で大きく後退した武蔵野市の行財政改革について、大きな懸念を持たざるを得ない。

 武蔵野市は「第七次武蔵野市行財政改革を推進するための基本方針及び武蔵野市行財政改革アクションプラン中間のまとめ」(以下、「第七次行財政改革」という)公表した。

 これまで策定された行財政改革の基本方針等について調べてみると、平成21年から24年までの第三次行財政改革までは事務事業の見直しを主要項目に置いており、重要視したのが確認される。しかし、平成25年から28年までの第4次行財政改革以降は、事務事業の見直しの項目のレベルが下がった。財政面での項目が減少するなど、いわゆる行財政改革からは大きく乖離し始めた。

 そして、第7次行財政改革であるが、

  • 行政報告のあった総務委員会では委員からわかりにくいなどという厳しい指摘があったほか
  • 令和6年12月23日実施の市民との意見交換会への議員以外の市民の参加者はゼロであり
  • 令和7年1月8日実施の意見交換会は議員関係者を除くと、市民は2名が参加、在勤が1名という状況だった
  • また、寄せられたパブリックコメントは私を除くと4件のみしか提出されなかった

のである。14万8千人の市民のうち、この第七次行財政改革に参加した市民は議員以外では両手で数えられる程度ということになる。

 残念だが、第7次行財政改革は市民不参加のもの、市民から支持されたものではないと指摘せざるを得ない。

 また問題は、第七次行財政改革のアクションプランの筆頭に、「市民参加の在り方の追求」とある。うたっていることと、実態の食い違いが極めて大きい。武蔵野市はこれまで後退した行財政改革への取り組みがこの問題・状況を創り出したことに真摯に向き合い、市民不参加ではない市民が強い関心を持つ行財政改革を推進していく必要があろう。

4. 武蔵野市の立て直しには行財政改革の強力な推進が必要である!

 小美濃市政となってこの一年間、吉祥寺南病院継承問題への取り組み、都営水道との統合、給食費無償化、家具転倒金具購入費補助事業など、市民目線の安全安心の街づくりが前に進められていることは評価するところである。

 しかし、上述したように、今後、18年間で生み出された負の遺産が大きく顕在化して市の財政を圧迫する可能性が極めて高いことは建設費高騰などから確認されている。

 一方、18年間先送りされた都営水道との統合、吉祥寺駅南口の再整備、三鷹駅北口の再整備など、多額の税金が必要となる大規模事業も前に進めなければならない。

 また、住民投票条例などイデオロギー最優先の市政運営が行われた松下市政においての行財政改革の遅れを取り戻さなくてはならない。

 小美濃市政においては、18年間の行財政改革の後退によって生じる財政問題についての責任が転嫁されることにならないよう

  • 18年間で行財政改革への取り組みが大きく後退したこと
  • 同じく18年間で高コスト化が進んできたこと
  • 資材高騰の影響を含めて公共施設の再整備に多額の税金を投入しなければならないこと
  • 先送りされてきた街づくりに多額の税金を投入する必要性があること

など、武蔵野市の財政状況を市民に、「伝える・伝わる」を実行し、市民に理解してもらう必要があろう。

 また、市民が強い関心を持つ、市民参加型の「行財政改革の基本方針等」を策定すること、外部の有識者による行財政改革委員会を設置することなど、後退し続けた市の行財政改革を抜本的に見直すことが求められる。

 今後、武蔵野市について、中長期的な視点で評価するならば、その評価を左右する最大の要因の一つは、行財政改革を強く推し進めることができるかどうかである。


 施政方針の基本姿勢にて行財政改革に言及した小美濃市長が、これまで大きく後退した武蔵野市の行財政改革を最優先事項の一つとして前に進めていくことを強く期待したい。

武蔵野市議会議員
小林まさよし